統計的検定の基本概念
医療現場では、「AとBには差がある」と主張するためには、科学的な根拠が必要です。統計的検定は、観察された「差」が偶然なのか真の差なのかを確率に基づいて判断します。
医療統計で重要な検定
- t検定:2群間の平均値の差を比較(例:新薬と従来薬の効果の平均値)
- Mann-WhitneyのU検定:2群間の分布位置(中央値など)の差を比較
- χ²(カイ二乗)検定:カテゴリカルデータの頻度の差を比較(例:治癒率)
- F検定:2群間の分散(ばらつき)の差を比較
p値(有意確率)は「観察された差が偶然によって生じる確率」を表します。一般的に、p値が0.05未満の場合、「統計的に有意な差がある」と判断します。
実践例と演習
以下の4つの医療シナリオについて、適切な統計的検定を用いてデータを分析します。JASPを使って実際に検定を行い、結果を解釈する方法を学びましょう。
例1:血圧降下薬の効果比較(t検定)
循環器疾患である高血圧患者に対する2種類の降圧薬(薬A:新薬、薬B:標準治療)の効果を比較する研究。
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例2:手術法の成功率比較(χ²検定)
整形外科疾患である腰椎椎間板ヘルニアに対する2種類の手術法(A法:従来法、B法:最小侵襲法)の成功率を比較する研究。
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例3:鎮痛薬の効果比較(Mann-WhitneyのU検定)
疼痛管理の問題として慢性腰痛患者に対する2種類の鎮痛薬の効果を比較する研究。
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例4:地域別の肝機能検査値の分布比較(F検定とt検定)
臨床検査値に関する問題としてALT値の地域差を調査する研究。
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JASPの基本操作
JASPは無料の統計ソフトウェアで、直感的なインターフェースと視覚的に理解しやすい出力が特徴です。
基本的な使い方
- JASPを起動し、「File」→「Open」からCSVファイルを開く
- データビューでデータ型を確認・調整する
- 「薬剤」「手術法」などのカテゴリ変数は「Nominal」に設定
- 「血圧低下量」などの数値変数は「Scale」に設定
- 上部メニューから適切な検定を選択する
- 左側パネルで変数を指定し、オプションを設定する
- 右側に表示される結果を解釈する
ヒント:JASPでは、基本の検定結果だけでなく、効果量(Effect Size)や信頼区間なども同時に表示されます。これらは結果の解釈に役立ちます。
考察のポイント
統計的検定結果を解釈する際の重要なポイントは以下の通りです:
- 統計的有意性と臨床的意義の区別:p値が0.05未満でも、その差が臨床的に意味があるかどうかを考える
- 効果量の評価:差の大きさを表す効果量(Cohen's dなど)を確認する
- サンプルサイズの影響:小さすぎるサンプルでは検出力が弱く、大きすぎると微小な差も有意になる
- 検定の前提条件の確認:t検定では正規性、等分散性などの条件を確認する