電気刺激フィードバックを用いた新たな移動支援技術の開発について
本研究は、視覚情報を喪失した人が安全かつ効率的に移動できるよう、通電信号を用いて他者の接近を知らせる新しい方法を開発・検証することを目的としています。従来の視覚障害者移動支援技術と比較して、より直感的で素早い危険察知が可能となる技術の確立を目指しています。
2024年度の研究では、視覚を遮断した晴眼者を対象に、低周波通電信号による接近認識と衝突回避行動の有効性を検証しました。進化した人工知能を組み込んだ実験システムを再構築し、刺激条件を一定に保つため、従前の実験で被験者に模擬点字ブロック上の歩行課題を行わせた映像を接近刺激として用いました。
本研究では、以下の要素を含む統合的な実験方法論を採用しています。
首のC7棘突起部に電極を貼付し、刺激の開始タイミングや間隔を変化させるコンピュータ制御プログラムを実装しました。
低周波・中周波・高周波の通電信号を用い、それぞれの刺激条件における反応時間と衝突回避成功率を比較検証しました。
通電刺激前後の脳波変化を記録し、α帯域の周波数コヒーレンス分析により、信号認識における脳活動パターンを解析しました。
視覚を遮断した晴眼者を対象に、通電信号を用いた接近認識と衝突回避行動の有効性を検証する実験を実施しました。
被験者は閉眼状態で、模擬点字ブロック上の歩行課題を行う映像を接近刺激として提示されます。通電信号による警告を受け取った際の反応時間と回避行動を測定し、異なる刺激条件間で比較を行いました。
従来法と比較した結果、中周波通電を用いた場合に最も高い成功率と短い反応時間が得られました。これは中周波域の刺激が体性感覚として最も認識しやすく、処理速度が速いことを示唆しています。
脳波測定においては、中周波通電時に電流が10mAを超えると、特にAF3、AF4の波形に符合間干渉が生じ、生データの解析ではフィルターを介さず波形分離が必要であることが明らかになりました。周波数分析による刺激前後のα帯域の周波数コヒーレンスを分析した結果、通電信号の符号認識に成功した場合には、短時間で同期が解除される特異的な脳波パターンの存在を確認できました。
通電信号の刺激条件によって反応時間やコヒーレンス解除までの時間に個人差がみられ、刺激強度・周波数・開始タイミングが最適化に与える影響を今後精査する必要性も浮かび上がりました。
晴眼者の閉眼下で得られた応答結果は晴眼者の通電信号の処理機能モデルの作成に用いることが可能になると思われました。これらは失明者の通電信号の認識課程を考察するために比較するための基礎データとして使用する見通しが立ちました。
本研究の次のステップとして、以下の展開を計画しています。
2024年度の晴眼者データを基に、実際の視覚障害者を対象とした実験プロトコルを確立しました。次年度は、先天性および後天性視覚障害者を対象に、通電信号による接近認識と衝突回避の効果を検証します。
研究成果を基に、日常生活で使用可能な小型・軽量かつ高性能な通電信号フィードバックデバイスのプロトタイプ開発を進めます。バッテリー効率、装着性、耐久性などの実用面での課題解決に取り組みます。
人工知能による環境認識と通電信号フィードバックを統合したシステムの精度向上を目指します。個人の特性に応じた最適な刺激条件を自動調整する機能の実装を検討しています。
視覚障害者を対象とした次年度の実験および解析手順を確定しました。今年度得られた成果の一部は、国内学会および国際学会において発表し、論文化も進めました。次年度以降は、より実用化に近い検証を進める予定です。